中国人の人的パワーに日本は勝てるか?<後編>

日本の強さの源

たとえばヨーロッパ、とくに海を隔てた隣国であるイギリスが大嫌いなフランス人から、日本人はどう観られているかというと「ひたすら真面目に働いて、これといった楽しみも持たず、何のために生きているのか?」程度の認識だ。自国が世界における文化の中心地だと信じきっている彼の国は、ただただプライドが高いので極東の島国が経済大国であっても、アメリカの植民地くらいにしか思っていない。全国民が長期休暇/バカンス*1をとるので、おまえたちももっと休めよといいたげだ。

またフランスはいまでも中世の景観が保たれているのが、ひとつの強み、特長となっている。石造りの建造物が多く、ローマ時代の遺跡もそのまま残っているので、内装を変えるだけでこと足りる。だからインテリアデザインやリフォームがとても上手だ。家を建てる費用が内装代で済むから、バカンスにでかけられるのである。

その点で日本は、瀬戸物と土と木と紙でできた住居なので、天変地異に弱い。弱いというより、雨が多く湿度が高い上に、地震や台風、火事、洪水に絶えず見舞われる風土なのだから仕方がない。本来、日本人が真面目なのは天変地異に備えなければ、生き残れなかったからだ。

赤道直下の国々の人は働かない。ラテン系も働かない。ヨーロッパ人もバカンス中は働かない。中国とロシアは絶えず小さな内戦続き。だから日本が経済大国になれたのだ。優秀だからではない。天変地異に対する危機感が「勤勉さ」を生みだし、天変地異への備えゆえに「貯蓄高世界一」なのだ。技術立国だ、製造技術世界一だなんて浮かれて勤勉さを失ったら、あっという間に地べたに落ちるのだよ。ゆとり教育の失敗がいい例だ。

#ちょうどいまの日本は、30年前のフランスが直面した人口減少問題にぶつかっている。30年前のフランスも人口分布が「釣り鐘型」だった。それを移民で解決した。だからサッカーのアンリ選手はフランス人。フランス国内でも問題がないわけではない。移民で解決すると根深い差別問題が残る。

イギリスvsフランス、日本vs中国

イギリスとフランスはとても仲が悪い。ともに相手の国が大嫌いだ。だけどそれほど大きな経済格差がないので、いつも相手国を皮肉の対象にへつりあげる程度で終わる。で、その地理的位置を裏返したような日本と中国だが、2国間の所得格差はいまのところ大きい。だからこそ中国は日本を徹底的に非難する。親日家の中国人教授によると、これはコンプレックスの裏返しであるという。生活レベルで中国は日本と肩を並べたいのだけれど、まだまだ差が大きい。これが癪に触るから<怒り>の表現になるのだそうな。中国の生活レベルが日本並になったら、もっと仲良くなれますといっておられた。んー、そういわれれば、なんとなく納得できる気もする。

リサイクルに見るブラジル式に、興味津々な中国

アジアでは中国だけでなく、インドやベトナムの台頭も著しい。インドの活躍ぶりは『フラット化する世界』で詳細に紹介されているからココでは書かないが、ふと目を南米に向けてみるとブラジルも赤マル急上昇中だ。そしてこのブラジルで大成功を納めているリサイクルプラントに、中国がとても興味を示している。

ゴミのリサイクルは先進国にとっても頭の痛い問題でもある。ヨーロッパではドイツがリサイクル先進国としてよく話題にのぼる。だが、これは生真面目なドイツ人だからできるのであって、他の国にはなかなか浸透していない。そんななかでブラジルが発表したゴミのリサイクルプラントは、貧民窟の住民にゴミの選別を仕事として与えるシステムだ。人がやるからとても正確で、不純物の混入が少ないから資源として再利用ができる。国としては生活保護層の人々に仕事を与えられるので都合がいい。そしてもっといいのは、先進国のゴミを有料で受け入れることができるのだ。ニューヨーク州などはゴミを埋め立てる場所に困っているから、朗報でもある。これにいま中国は興味を持っている。なんせ人は売るほど&腐るほどいるからだ。

ここでもやぱり、人が多いというのは国としての武器になることがわかる。人は最高のセンサーであり、精密機械である。それに余談となるが、中国はいまだに死刑が大手を振る国だ。日本では刑務所に入っている犯罪者一人あたりの経費は年間400万円を越える。*2これが一切費用としてあがってこない。なにせ判決がでれば、すぐ死刑執行されるから。また獄中死も多い。人が多いと命も軽い。これも強みになっていく。


『メディア探求』という切れ味鋭いブログ記事にAmazonと機械仕掛けのトルコ人(前編)というのがある。

AmazonMechanical Turkというけったいな名前のWebサービスを始めたという。Amazonの説明を要訳すると...

 わが社はコンピュータを使って複雑なソフトウェアを開発してきたが、いまだに人間なら子供でもできるのに、コンピュータにはできないような作業がある。例えば、ある写真の中に人間が映っているかどうかを見分ける作業とか。今までは人間がコンピュータに仕事をさせてきたが、立場を逆転させ、コンピュータが人間に仕事をやらせてみてはどうか?プログラミングのプロセスに人間を組み込んでしまおう。

つまりコンピュータが苦手とするような作業を人の手を借りてやろうというもの。アプリケーション開発者にとっては、煩雑な手作業を世界中のPCユーザーに外注できPCユーザーにとっては空いた時間を利用して小銭を稼げる。Amazonはその仲介料を抜くって仕組みだ。(中略)

まあともかく、ヒマな時間を利用して小遣いを稼げるなら自分もやってみるかと思いきや。おい!作業1つにつき報酬が3セントって安すぎないか?ある体験者によれば、3時間やって報酬が5ドルだったとかいうから、マクドナルドの時給の何分の1だ?アメリカでは「悪徳商法(scam)だ」とか「奴隷制だ」とかユーザーから反感かってるようだ。
でも、この仕事が発展途上国の月収2万円とかのPCユーザーにも開かれていることを考えると、ちがった景色が見えてくる。この「ITにより洗練された内職斡旋サービス」が世界の労働市場を大きく変えるほどのインパクトを秘めている気もする。(中略)


この記事を読んでいると、日本が有利になることが何も思いつかなくなる。アメリカもまたそうだろう。アメリカ人がいくら上流階級のコロニーを造っても、裏口から有色人種の家政婦や使用人が出入りしないと生活が成り立たない。かといって、何もかも自分自身でやろうとすれば、人は昔のような穏やかだけれど不便な生活に戻らなくてはならない。それはどう考えてもムリがあるだろう。

産業革命が起こり、専業化が進んでさまざまな生活の利便性を高める商品やサービス、社会的インフラが手に入った。だがそれは、市場の見えざる手がいつまでも資本主義に友好的だという証にはならない。ミクロでは良かった経済政策が、*3マクロから観れば至るところに、ほころびが見え隠れする。*4そろそろ真剣に日本の未来を考えないと、おそろしい結果が待っていそうなのである。


できれば『分裂勘違い君劇場』の世界に一つだけじゃない花も参考にしてほしい

そして、その闘争を勝ち抜くための、もっとも効果的な戦略は、命を使い捨てにすることだ。
命というのは、いくらでも簡単に再生産可能だからこそ、強いのだ。
とにかく、いくらでも命を量産して、物量で敵を圧倒する。仲間が何万人死のうが、その屍すらも平然と食らい、さらなる命を量産する。
シューティングゲームにおいて、残弾数を気にせずに、いくらでも撃ちまくれる銃を持ったプレーヤーが圧倒的に強いのと同じ理屈だ。一つ一つの弾(=いのち)を惜しんでいたら、この闘争に満ちた世界では、あっというまに絶滅するだけだ。

*1:2ヶ月くらい働かずにただ遊びほうける。これがなければGDPはもっと高いだろうが、バカンスのために働いているのも事実。

*2:ヘタな中小企業の課長クラスよりお金が必要なのだ。ニートが何万人だと騒ぐよりコレを問題にしろ!といいたい。

*3:とくにニューデール政策という崩壊した政治手法や、スクラップ&ビルドといった大量生産/大量消費スタイル

*4:そのマクロも時を経ることで、またミクロになったりするから面白い。タオでありフラクタルである